博士論文口頭試問 針貝真理子
Öffentliche Verteidigung der Disseratation von Frau Mariko Harigai
『場所なき声——現代演劇における声と場所の関係 (Ortlose Stimme. Zum Verhältnis zwischen Ort und Stimme)』
開催日
2016年11月28日(月)
会場
ベルリン自由大学
口頭試問審査員
ドリス・コレシュ(第一審査者)、平田栄一朗(第二審査者)
ガブリエレ・ブラントシュテッター、マティアス・ヴァルシュタット(エリカ・フィッシャー=リヒテ代理)、アダム・シチラク
2016年11月28日、ベルリン自由大学演劇学研究科にて、同年7月に受理された針貝真理子さんの博士論文の口頭試問が実施され、最高点のsumma cum laudeで合格しました。
本論文は、言葉とは異なる次元で人を引きつける力を持つ現象である「声」が、人々が集まる場を演劇空間の中に生成および解体するプロセスを分析し、それを理論化したものです。
ここでは、マレビトの会の『アウトダフェ』(2006)、『声紋都市——父への手紙』(2009)、『HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』(2010)、エルフリーデ・イェリネク作、ヨッシー・ヴィーラー演出の『雲。家。』(1993)、ハイナー・ミュラー作、ロバート・ウィルソン演出『ハムレット・マシーン』(1986)、ニードカンパニーによる三部作の『イザベラの部屋』(2004)、『ロブスター・ショップ』(2006)、『ディアハウス』(2008)といった上演作品が分析されています。
本論文は、針貝さんがDAADでベルリン自由大学での留学を開始した2008年より、「声」の研究における第一人者である同大学のドリス・コレシュ教授のもとで構想を練り、同大学のガブリエレ・ブラントシュテッター教授、平田ゼミへの招待で来日したライプツィヒ大学のギュンター・ヘーグ教授、パトリック・プリマヴェジ教授、フランクフルト大学元教授ハンス=ティース・レーマン氏などのアドバイスを受けながら執筆したものです。
針貝さんは修士課程入学以来、自明であるがゆえに扱いづらい「声」を研究対象とし、舞台作品に浮かんでは消える声の特徴を現象・構造・関係性の論などによって明らかにしました。「異文化」「自己文化」というように文化を安易に線引きすること自体に批判的視座を向けたり、自己文化のなかにある異他的なものをしっかりと見つめる演劇の意義を検証する試みです。
約10年にわたる地道で着実な研究の意義は、針貝さんがベルリン自由大学に提出した博士論文への高い評価によってしっかりと認められました。
力が最高の評価で認められたことに、心よりおめでとう!と申し上げます。
(報告とコメント:平田)


